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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第6章 希望の道






哲学者の石。
天上の石。
大エリクシル。
赤きティンクトゥラ。
第五実体。

賢者の石にいくつもの呼び名があるように、その形状は石とは限らないようだ。


「だが、これはあくまで試験的に作られた物でな。いつ限界が来て使用不能になるかわからん不完全品だ。それでもあの内乱の時、密かに使用され絶大な威力を発揮したよ」

不完全品。
その言葉を聞いて私たちの頭に浮かんだのは、リオールの街にいたコーネロ教主のこと。
なるほど、彼が持っていたのも不完全品ということか。

「不完全品とはいえ、人の手で作り出せるって事は、この先の研究次第では完全品も夢じゃないって事だよな。マルコーさん、その持ち出した資料を見せてくれないか⁉」
「ええ⁉そんな物どうしようと言うのかね。アームストロング少佐、この子はいったい……」
「国家錬金術師ですよ」
「こんな子供まで……」

大きなため息を吐いて、マルコーさんは頭を抱えた。
潤沢な研究費をはじめとする数々の特権が与えられる国家錬金術師だが、一度命令が下されば軍の狗として人間兵器になることもある。
実際、あの内乱後に人間兵器として己の在り方に耐えられず、資格を返上した術師が何人もいたと言う。
そして目の前にも戦場の残酷さから逃げた人間がいる。
戦争とは、人の命を殺し心を殺す所業なんだ。
それでも兄弟は、エドワードくんは国家錬金術師になった。
それは莫大な研究費欲しさでも、数々の特権欲しさでもない。
ただ、元の身体に戻る可能性がある―――それだけのために、国家錬金術師に、軍の狗になった。



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