第6章 希望の道
リゼンブールは本当に遠い場所にあって、日付が変わっても汽車はリゼンブールに着く気配はない。
小さな村の駅に停車中の列車は、あと数分もすれば出発するだろう。
のどかな雰囲気が漂い、つい欠伸が出てしまう。
エドワードくんもどうやら同じようで、眠たそうに大きな欠伸を零した。
「まだ寝ていたらどうですか。着いたら起こしますよ」
「ん~、そうするかな……」
もう一度欠伸をして、窓の桟に肘を置いてそこに顎を乗せて瞼を閉じる。
その動きがひなたぼっこをするネコのように見えて思わずかわいいと思ってしまった。
「少佐も寝てはどうですか。あまり寝ておられないように思います」
「我輩のことは気にするな」
少佐はにっこりと笑うと読書を続けたかと思うと、急に身を乗り出してプラットホームを歩く人物に声を掛けた。
「ドクター・マルコー!!ドクター・マルコーではありませんか⁉」
「マルコーさん!?」
その名を聞いて私もまた身を乗り出した。
男性は驚いたように振り返り私と少佐の顔を見ると血相を変えて一目散に逃げだしてしまった。