第1章 三人の錬金術師
軽く息を吐いたエドワードくんは、懐から分厚い手帳を取り出し、ページを開いた。
「水35ℓ、炭素20㎏、アンモニア4ℓ、石灰1.5㎏、リン800g」
その数字には、覚えがあった。
「塩分250g、硝石100g、イオウ80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3g、その他少量の15の元素……」
それは、大人一人分として計算した場合の人体の構成成分。
人体を構築するために必要な材料。
今の科学ではここまで判ってるのに、実際に人体錬成に成功した例は報告されていない。
"足りない"何かがなんなのか……。
何百年も前から科学者たちが研究を重ねてくてそれでも未だに解明できていない。
それが現状。
「不毛な努力って言われているけど、ただ祈って待ち続けるよりそっちの方がかなり有意義だと思うけどね。ちなみにこの成分材料な。市場に行けば子供の小遣いでも全部買えちまうぞ。人間てのはお安くできてんのな」
「人は物じゃありません!創造主への冒涜です!天罰がくだりますよ!」
ロゼさんの怒鳴る声が礼拝堂に響く。
同時にエドワードくんの笑う声も。