第6章 希望の道
「んで、。おまえにもだ」
「私にも……?」
「"何かあったら……"」
「"了解です。かしこまりました。以後気を付けます"ってお伝えください」
最期まで伝言を聞かず思わずそう口走っていた。
昨日の大佐の過保護っぷりには本当に辟易してしまうものだった。
ちゃんと怪我が治ってから出発したほうがいい、リゼンブールは遠すぎやしないか、宿はどこの宿を取るつもりなのか、など子供を心配する親のような大佐に鬱陶しさを覚えた。
そのうちトイレやお風呂にまで護衛をつけると言いだすのではないかと怯えていたが、流石にそこまで至らなくて本当によかったと胸をなでおろした。
「まあ、そんなに怒るなよ」
「怒ってはないですが、しつこいなとは……思います」
軽くため息を吐いて頬を僅かに膨らませると、ヒューズさんは優しい笑みを零して私の頭を撫でた。
それはまるで父親そのもの。
「俺からも伝言。"おまえが怪我をしたら悲しむ奴がたくさんいる。忘れんなよ"」
「…………はい」
きっとヒューズさんにはばれている。
彼だけではない。
エルリック兄弟も、アームストロング少佐も、大佐もリザさんもみんなみんな、わかっている。
私が無理をして身体を動かしていることを。
本心は休んでほしいのだろうけど、そんなことを言ってしまえば私が困ってしまうことも分かっているから何も言わないでいてくれる。
ああ、本当に私はなんて愚かなんだろう。
こうして言葉にしてもらわないと、何も気づかないなんて。
こんなにも私を想ってくれる人がいることに気づけないなんて、バカだな私は。