第6章 希望の道
「それより、おチビさんの護衛になったとか聞いてないんだけど」
「あら、知らなかったの。意外ね」
頬をいっぱいに膨らませ、拗ねた子供のような口調になるエンヴィーにラストは驚きを隠せないでいた。
あの子のことはなんでも知っていると思ったのに、と呟けば「情報がなきゃ知るわけないじゃん」と更に拗ねた顔をして唇を尖らせた。
「本当に好きね、あの子のことが」
「大好きだよ。初めて見た時から」
ニヤニヤとした笑顔を張り付けるエンヴィーにラストは溜息を吐いた。
エンヴィーの言う好きという感情は、親や家族、恋人に対して抱く愛情とは違い、お気に入りのおもちゃを壊そうがなにしようが自分のものなんだから自由だろ、という意味が込められているような気がした。
ラストの考えは半分正しく半分間違っていたが、それを口にすることはない。
なぜなら当の本人であるエンヴィーが、自分自身の本当の気持に気が付いていないのだから。
「ああ、早く会いたいよ―――」
媚びるような甘ったるい声は、暴動の音に紛れ灰色の空へと静かに消えていった。