第5章 雨の後
それよりも私はヒューズさんの言ったとある単語に引っかかった。
ヒューズさんは確かスカーは錬金術を使うとかって言っていなかったか。
思い出せば、たしかにあれは錬金術だった。
でも、錬金術の錬成過程は大きく分けて三つ……。
なるほど、スカーは2番目である"分解"の過程で錬成を止めているというか。
……だからあんなことが。
「さて!辛気臭ぇ話はこれで終わりだ」
ヒューズさんが膝を叩き、それまでの重たかった空気を断ち切った。
そして次の話題はエルリック兄弟の今後の動向についてなのだが、早くも暗礁に乗り上げたようだ。
「アルの鎧を直してやりたいんだけど、オレこの腕じゃ術を使えないしなぁ……」
今のエドワードくんじゃ錬金術を使えない。
こんな状態でスカーや何か事件に巻き込まれた時、どうすることもできない。
ただでさえ、エルリック兄弟―――特に兄の方は問題児で有名なのだから。
「我輩が直してやろうか?」
「遠慮します」
そんな中、アームストロング少佐がアルフォンスくんの鎧を直そうかと提案したが、彼は丁重にきっぱりと断った。
エドワードくん曰く、そもそも鎧と魂の定着方法を知っているのはエドワードくんだけだから、直し方も彼にしかわからないとのこと。
そんな彼は何度も言うようだが錬金術が使えない。