第5章 雨の後
「まずはオレの腕を元に戻さないと」
「そうよねぇ……。錬金術の使えないエドワード君なんて……」
しみじみと言うリザさんに続き、各々が率直な感想を述べた。
「ただの口の悪いガキっすね」
煙草を咥えながらハボック少尉が言う。
「くそ生意気な豆だ」
ヒューズさんがいたく真面目に言う。
「無能だな無能!」
自分のことを棚にあげて言うマスタング大佐。
「ごめん兄さん。フォローできないよ」
何気に一番酷いことをいうアルフォンスくん。
弟にも見放されて「いじめだー!!」と騒ぐエドワードくん。
先ほどまでの重い空気はどこへやら。
執務室は一瞬にして騒がしくなった。
「しょーがない。うちの整備師の所に行ってくるか」
そんなわけで、彼の故郷であるリゼンブールへと行くこととなった。
何年ぶりになるだろうか。
あの日の彼女は、今頃どうしているだろうか。
騒がしい執務室をぼんやりと眺めながら、彼女のことを思い出していた。