第5章 雨の後
一通りヒューズさんのスキンシップが終わり、漸く本題に入った。
なぜスカーが国家錬金術師ばかりを狙うのか、そしてなぜ私を憎んでいるのか、兄弟には知る権利がある。
知られたくない過去、私の犯した罪、背負わなければいけない罰。
彼らはこの事実を知って私を恐れたりしないだろうか、離れてしまわないだろうか、嫌われ……ないだろうか。
兄弟から嫌われるのがこんなに怖いなんて、思わなかった。
大佐は静かに語った。
イシュヴァールの内乱のことを。
イシュヴァールの民はイシュヴァラを絶対唯一の創造神とする東部の一部族だった。
宗教的価値観の違いから国側とはしばしば衝突を繰り返していた。
しかし、13年前に軍将校があやまってイシュヴァールの子供を射殺してしまった。
それをきっかけに大規模な内乱へと爆発した。
暴動は暴動をよび、いつしか内乱の火は東部全域へと広がった。
7ねんにもおよぶ攻防の末、軍上層部から下された作戦は―――国家錬金術師も投入してのイシュヴァール殲滅戦。
戦場での実用性をためす意味合いもあったのだろう。
多くの術師が人間兵器として駆り出された。
「私もその一人だ」
当時、英雄と呼ばれた大佐は自分がまるで犯罪者であるかのように語った。
でも、きっとあの場にいた全員大佐と同じ気持ちだろう。
そして同時に、スカーが抱く憎しみを私は誰よりも理解できる。