第5章 雨の後
「……死ぬほど心配したんだぞ、」
ゆっくりと身体を離され、頭を撫でられる。
ヒューズさんの表情は先ほどまでの気の緩んだものではなく、眉間に皺を寄せ唇を噛みしめた、子供を心配してくれている親そのものの顔だった。
「ごめんなさい……」
少しだけ厳しい父親の顔に、素直に謝る事しかできない。
そんな私をヒューズさんはまた優しく抱きしめた。
暖かい温もりに、泣いてしまいそうになってそれをごまかすために彼の背中に腕を回した。
「あんまり無茶をするな、頼むから」
「はい……」
「えっと……2人ってどういう関係なんだ?」
私とヒューズさんの雰囲気にエドワードくんはおそるおそると言った様子で尋ねる。
それに応えたのはマスタング大佐だった。
「ヒューズは彼女の親代わりみたいなものだ」
「「親代わり?」」
「ああ。幼い頃、いろいろあってはセントラルに住んでいたんだ。その後、軍人になり私の部下として東部へ異動となった」
イシュヴァールの内乱が終結した時、私はまだ14歳だった。
いくら雪女と恐れられようとまだ14歳の私は一人で生きる術を持ちあわせていなかった。
そんな時、世話好きのヒューズさんが引き取ってくれたのだ。