第5章 雨の後
脳内で心臓が鳴っているのではないかと錯覚するほど大きく脈打つ鼓動の音が、彼の耳にまで聞こえていやしないかと心配になる。
そっと離れていく彼の熱に「……あっ」と名残惜しそうな声が漏れ、慌てて手で口を抑えた。
なに、これ。
私は一体どうしてしまったのだろう。
先ほどとは違う涙が溢れだす。
なんで、こんなにも……。
エドワードくんは口を一文字に結び乱暴に頭を掻くと、大きく息を吸い込み意を決したように口を開いた。
「なぁ、……、のこと……抱きしめて、も……いいか?」
緊張で掠れた声色は、少年特有の色気があった。
爆発しそうなほど心臓が痛い。
何も言わない私に痺れを切らしたのか、それとも沈黙を肯定ととらえたのか、彼は私との距離を縮めそっと私の身体を両の手で包み込んだ。
先ほど頬に触れた指先なんかより、ずっとずっと熱気を帯びた身体に、胸がいっぱいになり泣きたくもないのに泣きそうになってしまう。