第5章 雨の後
「……っ、」
後先考えずに怒鳴ったせいか、傷口が開いてしまった。
冷汗を流しながら、我ながら感情的になってバカなことをしてしまったと反省する。
まだ子供の彼に言ってはいけないことも言ってしまった。
殺すだなんて、そんなことを彼の前でだけは口にしたくなかったのに……。
「……お前、なんで泣いて……」
「え……?」
そう言われて漸く気が付いた。
私の頬を零れる透明な涙の存在に。
いくつもの大きな雫は、ぼたぼたと真っ白いシーツにシミを作っていく。
自覚してしまえば、止める術などあってないようなもので、いくら目を擦ろうとも次から次へと溢れ出す。
「……ったく、怒ったり泣いたり忙しい奴だな」
「うるさいです……。泣いてなんて……これは、違います」
人前でこんなに泣いていることが恥ずかしくて、誤魔化そうとするが言い訳が苦しすぎる。
「……すみません、言いすぎました。私のことを心配して、いると言うのに……。私がもっとしっかりしていれば……エドワードくんもアルフォンスくんも、怪我なんて……っ。私の所為なのに……ごめんなさい」
「ちがっ……‼お前の所為じゃ……」
「……った……」
小さく漏らした嗚咽交じりの涙声に、エドワードくんは開いた口を閉じた。