第5章 雨の後
「仕事のことを考えられるほど回復したってことは、怒鳴ってもいいってことだよな?」
「……え?」
理解する間もなくエドワードくんは息を吸って目を大きく見開き、空気が震えるほどの怒号を飛ばした。
「テメェ、人が逃げろっつってんのになんで逃げなかったんだよ!!しかも相手を挑発して名乗んなくていいことまで名乗りやがって!!なぁにが"私のことはいいです"だよ!!いいわけねぇだろが!!わかってんのか、テメェ!!死ぬとこだったんだぞ!!雪女だかなんだか知んねえが、いい加減にしろこの馬鹿野郎!!!」
長ったらしいセリフを一息で、しかも鼓膜が破れんばかりに叫んだエドワードくんの肺活量はいったいどうなっているのだろう。
目を吊り上げたまま肩で息をするエドワードくんをきょとんとした表情で見つめることしかできなかったが、言われたセリフはまんまアルフォンスくんがあなたに言ったことじゃないか。
それをなに我が物顔で偉そうに言っているんだ。
私の中でプチンと何かが切れた音がした。
「"いい加減にしろ"はこっちのセリフです!!何を偉そうに説教してるかと思えば、アルフォンスくんに言われた言葉を繰り返しているだけじゃないですか!!あなただって逃げろって言われて逃げなかったくせに、よく私にそんな事言えますね!!私はあなた方の護衛です!!あなた方を護るのが仕事です!!それを放棄することなどできるはずもないでしょう!!私やアルフォンスくんを守ろうとしてあのような言動をしたなら、もう二度としないでください!!殺してくれと言っているような、自殺行為に似たようなことはしないと約束しなさい!!もし死にたいならその時は私に言いなさい!!今すぐにでも殺してあげますよ!!!」
エドワードくんに負けず劣らず私も病院全体に聞こえそうなほど大声で怒鳴った。
これにはさすがのエドワードくんも驚いたようで反論の言葉は彼の口から出てくることはなかった。