第5章 雨の後
「なんでだよ!オレだけ逃げたらおまえら殺されてたかもしれないじゃんか!!」
「殺されなかったかもしれないだろ!!生きのびる可能性があるのにあえて死ぬ方を選ぶなんてバカのする事だ!!」
「あ……兄貴にむかってあんまりバカバカ言うなーーーっ!!」
アルは言い返すこともできずに、子供のように駄々をこねるオレの胸倉を思い切り掴んだ。
「生きて生きて生きのびて、もっと錬金術を研究すればボク達が元の身体に戻る方法も……ニーナみたいな不幸な子を救う方法も見つかるかもしれないのに!!それなのにその可能性を投げ捨てて死ぬ方を選ぶなんて、そんなマネは絶対に許さない!!」
アルに諭され、オレは自分の考えが自分勝手なものなのかを知った。
ニーナは救えなかった。
だけど、今度は誰も死なせない方法を、救う方法を見つければいい。
……そんな風に考えたこと、オレはなかったよ。
こんな状況で、気付くなんて……オレはバカだ。
「ボロボロだな、オレ達。カッコ悪いったらありゃしねぇ」
「でも、生きてる」
「うん、生きてる」
確かめるように、実感するように、小さく呟いた。
漸く安心できたと思ったその瞬間、ばしゃんと何かが地面に倒れる音がした。
横を見ると、顔面を青く染めぐったりと横たわるが。
「!!」
血なのか雨なのかわからないほど濡れたの身体を抱きしめると、まるで氷でできているかのように冷たく、生きているのかさえ疑わしく思えてくる。
「!!おい、返事しろ!!!!」
何度彼女の名を呼んでも、彼女からの返事は一度も返ってくることはなかった。