第5章 雨の後
男は言った。
錬金術師とは元来あるべき姿の物を異形の物へと変成する者。
それは万物の創造主である神への冒涜、だと。
「我は神の代行者として裁きをくだす者なり!」
「それがわからない。世の中に錬金術師は数多いるが国家資格を持つ者ばかり狙うというのはどういう事だ?」
「大佐、コイツは……」
「どうあっても邪魔をするという言うのならば貴様も排除するのみだ」
が何かを言いかけたが、それは男によって遮られた。
男の挑発に簡単に乗せられた大佐は持っていた銃とホークアイ中尉に投げ渡すと錬成陣が描かれた発火布を手にした。
「おまえ達は手を出すな」
「マスタング大佐!!」
男との距離を取りながらが叫ぶ。
すると男の表情がまた変わった。
大佐が国家錬金術師と知ると、ごきっと手の指を鳴らし殺気を飛ばす。
「神の道に背きし者が裁きを受けに自ら出向いて来るとは……。今日はなんと佳き日よ!!」
「私を焔の錬金術師と知ってなお戦いを挑むか!!愚か者め!!」
指を鳴らそうとした大佐だったが、咄嗟のところでホークアイ中尉が大佐の足を蹴り飛ばし、もまた拳銃を手にして男に向けて撃っていた。
不意打ちだったにも関わらず銃弾を躱す男にが舌打ちをした。
「いきなり何をするんだ!」
「雨の日は無能なんですから下がっててください大佐!」
「自分の弱点を把握していないのは、どうかと思います」
ホークアイ中尉とに怒られる大佐はあからさまに落ち込んでいるが、そうか、湿った日に火花は出せないか。