第5章 雨の後
そんな男とは対照的にはどこか悲しそうで今にも泣きだしそう表情をしていた。
なんでそんな顔をするのかわからなくて、オレはのことを何も知らないことに今更気が付いて。
こんな状況なのに、彼女のことを知りたいと強く思った。
「貴様だけは……‼貴様だけは何としても滅ぼす!!雪女!!」
「……私が、雪女なら……あなたはさしずめ"イシュヴァールの復讐鬼"といったところでしょうか」
今にも倒れてもおかしくない状態で、なおは男を挑発しまくる。
全身から流れ出る血液と叩きつけるような雨を混ぜ合わせて、は紅い大鎌を錬成する。
紅い装束に身を包み、紅い大鎌で雨粒を祓うその姿はまるで死神のようだ。
ああ、が死んでしまう。
こんなの勝負にもならない。
嫌でも理解ってしまう。
「……逃げろ、逃げろ!!!!!!」
力の限り叫んだところで、もう誰にも止められはしない。
2人がぐっと体に力をこめ、地を蹴ろうとした刹那―――。
重たい銃声が空気を震わせた。
「そこまでだ」
騒ぎを聞きつけたのか、それとも連絡を受けたのか、そのどちらもか、とにかく大佐が空に向かって威嚇射撃をした。