第5章 雨の後
「邪魔者は……排除する、でしたか……?殺して見なさい、この私を……」
虚ろな瞳で口角をあげるに、この男とはまた違う恐怖がオレの全身を包んだ。
その時、ちらりと横目でがオレを映した。
小さく笑う彼女は、先ほどの狂気じみた笑みではなく、優しく柔らかいもので。
の意図を理解してしまった。
は自分に殺意が向くように仕向けたんだ。
オレたちを護るために。
「そういえば……挨拶が、まだでしたね……。私は・アールシャナ。……"雪女"と名乗った方が……聞き馴染みあるでしょうか。イシュヴァールの民、スカーさん?」
不敵には笑った。
雪女。
その言葉を聞くのは二度目だ。
タッカーが言っていた。
イシュヴァールの内乱がどうのって。
つうか、こいつイシュヴァール人なのかよ。
情報が追い付かなくて頭が混乱する。
「ゆき、おんな……っ!!」
男の瞳に今までにない以上の怒りや憎悪が篭った。
激しい殺意が全身からあふれ、サングラスの奥の瞳に渦巻いている。