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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第5章 雨の後






絶望が襲い掛かり、戦意も喪失し、オレはその場に膝をついた。

「兄さん!!」

アルの声がずいぶん遠くに聞こえる。
右腕がなければ、オレは錬金術が使えない。
どうすればこの窮地から抜け出すことができるか、必死に考えるが、そんなのあるわけがない。

「神に祈る間をやろう」

これ以上オレの反撃がないと理解した男は、ゆっくりと近づいてきて、そう言ってきた。

「あいにくだけど祈りたい神サマがいないんでね」

科学者は神を信じない。
それに、神はオレ達に何をしてくれたというんだ。
今だって救いの手を差し伸べることなく、殺そうとしているじゃないか。
……………オレ、たち。
オレたち、じゃないよな。

「あんたが狙っているのはオレだけか?弟……アルやも殺す気か?」

嫌だ。
アルとが殺されるのは。
死んでも嫌だ。
大切な人が死んでいくのはもう、見たくない。

「邪魔をする者があれば排除するが、今、用があるのは鋼の錬金術師……貴様だけだ」
「そうか、じゃあ約束しろ。弟には、には、手を出さないと」
「約束は守ろう」

これで2人の命は保証された。
だけど、アルはきっと納得はしてくれないだろうな。
今だってボロボロになって、必死になってオレを呼んでいる。

「何言ってんだよ……。兄さん、何してる!逃げろよ!!立って逃げるんだよ!!」

無理だ。
今もし逃げたらこいつはきっとアルとを殺す。
そんなのオレは耐えられないよ。



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