第5章 雨の後
――エドワード・エルリックside――
瓦礫の山からが着ていた黒いコートの端がのぞき、雨に薄められた鮮血が流れ出る。
「そんな……さん?」
「うそ、だろ……。おい、!!」
オレとアルが駆け寄ろうとするが、男がそれを阻んだ。
「てめぇ、どけよっ」
「国家錬金術師……滅ぶべし!!」
よくもを……
奥歯を噛みしめて男を睨むが、目の前の奴は憤怒の怯むどころか憤怒の情を色濃く見せた。
正直、こんなヤバい奴を相手にできるわけない。
オレの中の危険察知がここから早く逃げろって叫んでいる。
できることならそうしたい。
だけどを置いて逃げられるわけがない。
瓦礫の下敷きになっている、今ならまだ間に合うかもしれない。
この程度のことでくたばったりなんかしない、そうだろ……。
赤く染まった瓦礫の山を見ながら、オレはオレに言い聞かせる。
こいつがそう易々と見逃してくれるはずもない。
一刻も早くを助け出すために覚悟を決める。
「やるしかねえ……ってか」
両手を合わせてパイプ管に手を伸ばし、短刀へと錬成する。
アルもまた覚悟を決めたようで、戦闘の態勢を取った。