第1章 三人の錬金術師
聖書の教えでは死者の復活はよくあることだ。
しかしそれは聖書の中で、実際に死人は生き返らない。
コーネロ教主がそれを説いているだけならただの宗教で片付けられる。
が、人々が口にする「奇跡の業」がどうにも引っかかる。
アルフォンスくんの錬金術を見て確かに「奇跡の業」だと口にしたところを見ると、コーネロ教主のやっていることは錬金術で間違いないと思うが、この目で確かめない事には何も言えない。
そしてロゼさんだ。
きっと誰よりもこの宗教を信仰している。
「……死せる者に復活を」
錬金術の禁忌を、果たしてそう簡単に、他人のために、犯すのだろうか。
「さん……?」
「教会に行きましょう。少し彼女と話がしたい」
「おい、勝手に行動すんなよ!」
文句を言いながらも、隣に並ぶエドワードくんとアルフォンスくんは、私の表情を見て何かを察したのか、それ以上は何も言わなくなった。
教会の礼拝堂に入るのはとても簡単だった。
拝観料を支払いさえすれば、簡単に中に入れてくれた。
太陽を背景に神様の像が立っている。
「これがレト神……」
「随分と立派な神様だな」
皮肉の混じった言い方だ。
でも、そう言いたい気持ちも分かる。
神様なんて、この世のどこにもいない。
何かに縋りたいだけの人間が作り出した偶像にすぎない。
神に縋ったところで、彼等はなにも齎しはしない。