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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第1章 三人の錬金術師





「こんにちは、おじさん。あら、今日はなんだかにぎやかね」
「おっ、いらっしゃいロゼ」

喧騒の中、明るい声が飛んできた。
声のする方へと目を向けると、そこには一人の少女が笑顔で駆けてくる。
よくここにはお供え物の買い物をしにきているのだろう、「いつもの」と言う彼女になんの迷いもなく店主は紙袋の中に果物やお菓子などを詰めている。

大事そうに紙袋を抱えた彼女は、急ぎ足で去っていってしまった。

「ロゼもすっかり明るくなったなぁ」
「ああ。これも教主様のおかげだ」
「彼女は……よくここに買い物に来られるんですか?」

私の問いかけに、店主は眉を下げた。
どこか言いづらそうにしているが、軽く息を吐いたあと、静かに彼女―――ロゼさんのことを教えてくれた。

ロゼさんは、どうやら幼いころから身寄りもなく一人者だったらしい。
その上、去年恋人を事故で亡くしてしまったようで、その時の落ち込みようは誰からみてもかわいそうに映っていたようだ。
そこを救ったのが創造主たる太陽神レトの代理人、コーネロ教主の教えだそうだ。

「生きる者には不滅の魂を、死せる者には復活を与えてくださる。その証拠が"奇跡の業"さ。お兄さんたちも一回見に行くといいよ!ありゃまさに神の力だね!」
「"生きる者には復活を"ねぇ……。うさん臭ェな」

エドワードくんがぽつりと呟いた。
私達は痛いほど知っている。
どんな力を持ってしても、死者は蘇らない。
私達は、この身を持って、痛いほど、知っている。


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