第5章 雨の後
雨の中、ひたすら走った。
ああ、嫌だ。
つい最近もこうやって必死になって走った。
気が付くのが遅くて、間に合わなかった。
ニーナさんを助けてあげられることができなかった。
まるで、今回もそうだと言うように雨は私の顔を強く打ち続ける。
五月蠅い、五月蠅い。
同じことを繰り返してたまるか。
死なせてたまるか。
今度は、絶対に救ってみせる。
だから、彼らを見つけた時心底ほっとした。
時計台の下で雨に打たれている彼らの元へ憲兵と共に駆け付ける。
「無事でよかった」
ぱっと見だけど、外傷はなさそうだ。
「今すぐ本部に戻ってください」
「今すぐ……?なんで」
「実は連続殺人犯がこの、あたりを……」
そう言いかけて、私は近づいてくる殺気に気が付いた。
ゆっくり振り向くとそこには褐色の肌に額に大きな傷の男がエドワードくんをするどい目つきで睨みつけている。
ゾワッと戦慄が走る。
「エドワード・エルリック……。鋼の錬金術師!!」
こいつだ。
こいつが、国家錬金術師殺しの犯人……!!
銃を構え撃とうとした瞬間、隣にいた憲兵が血を流し地面に倒れた。
なんて早い……全然見えなかった……。
一瞬怯んでしまったが、視界に入る兄弟の姿。
逃げろと叫んでも、恐怖で動けないのか彼らはその場から動こうとしない。
その間にもスカーはエドワードくんとの距離を縮めていく。
軽く舌打ちし、私は手にした銃の引き金を引いた。
同時に、鐘の音が響き渡りその音で我に返った兄弟は走り出した。