第5章 雨の後
東方司令部を後にし、雨の中を歩いた。
行く当てもないまま東方司令部近くにある大きな時計台の石段に座る。
ニーナのこととタッカーの言葉がずっと消えずに頭の中に居座り続ける。
―――"人の命をもてあそんだ"結果だろう!?
―――同じだよ、君も私も!
―――目の前に可能性があったから試した!
何度も否定するが否定すればするほどタッカーの声はどんどん大きくなっていく。
オレがやったこととタッカーがやったことは果たして本当に違うんだろうか。
母さんを蘇らせようとしてアルを鎧の姿にしてしまった。
今までのオレの錬金術は人を助けるためでもなんでもなくて、人の命をもてあそぶだけの――――――。
―――あなたとエドワードくんは同じではありません。
の声が聞こえた。
―――ちがいますよ。
凛とした彼女の声が、黒い泥沼のような思考を少しだけクリアしてくれた。
がなにを思ってそう言ってくれたのかは分からない。
だけど、嬉しかった。
認めてもらえたような、許してもらえたような、そんな気がして。
思考がわずかに腫れたおかげで、何度もオレを呼ぶアルの声に、漸く気が付くことができた。