第1章 三人の錬金術師
錬成をするアルフォンスくん。
青色の錬成反応に、あの日の記憶が脳裏に過り、気持ちが悪くなり眉間に皺が寄った。
街の人たちは、元に戻ったラジオを見て「奇跡の業」だとはしゃぐ声に、我に返る。
「ボク達、錬金術師ですよ」
「エルリック兄弟って言やぁけっこう名が通ってるんだけどね」
「……悪評の方でも有名ですよ」
「あ?」
鋭い眼光で睨む付けるも、事実なのだから仕方が無いだろう。
それでもやはり、彼等の名は有名なようだった。
しかし有名なのは「名前」だけで、「容姿」までは知れ渡っていなかったらしい。
"鋼の錬金術師"
エドワード・エルリック。
鼻高々になるエドワードくんの横をすり抜け、街の人たちはアルフォンスくんに群がった。
「いやぁ、あんたが噂の天才錬金術師!!」
「なるほど!こんな鎧を着ているからふたつ名が"鋼"なのか!」
「ふっ……」
「あのボクじゃなくて」
「へ?あっちのちっこいの?」
「ふふっ……」
「誰が豆粒ドちびかーーーッ!!!つうか、あんたも静かに笑ってんじゃねェぞっ!!!」
限界だった。
こんな見事な勘違い間違いがあるだろうか。
必死に笑いを堪えるので精一杯だったのに、どうやら少し漏れていたらしい。
「ボクは弟のアルフォンス・エルリックでーす」
「オレが!"鋼の錬金術師"!!エドワード・エルリック!!!」
「し……失礼しました……」
「そちらのお嬢さんは……?」
あまりの迫力に驚く人々。
恐る恐ると言った様子で私の事も伺った。
「・アールシャナです。東方司令部に所属しています。本日から彼等の護衛を任されまして」
困ったように笑えば「あんたも大変だな」と言わんばかりの視線を向けられ同情されてしまった。
この一瞬で同情されるとは思いもしなかった。