• テキストサイズ

【鋼の錬金術師】紅の幻影

第5章 雨の後





――エドワード・エルリックside――



『おかあさん。おかあさん。おかあさん!』
『どうしたの、エド』
『へへ~~~、プレゼント!』
『あら、お母さんに?どうしたの、これ』
『ボクが錬成したんだよ!』
『エドが?さすが父さんの子ね!ありがとう。本当にエドはすごいわ。こんなに立派な物を作れるなんて……』
『へへ』
『でも……。お母さんはちゃんと作ってくれなかったのね』




はっと目が覚めた。
さっきのが夢だと気づくのに少しだけ時間がかかった。
自分の心臓が大きく脈を打ち、冷や汗が全身から流れる。

昔の、記憶。
母さんに褒めて欲しくて、母さんの笑った顔が見たくて。
必死に錬金術を勉強して。

―――お母さんはちゃんと作ってくれなかったのね。

母さんはそんなこと言わない。
分かっている、あれは夢だ。
だけど……。

―――"人の命をもてあそんだ"結果だろう!!
―――お兄ちゃん、あそぼ
―――禁忌であると知っていても試さずにはいられなかった!
―――お母さんはちゃんと作ってくれなかったのね。

頭の中でずっとずっと響いている。
消したくても消えない。

機械鎧の左足が、きしっと小さな音を立てて痛んだ。
痛くて痛くて、俺は左足をぎゅっと抱きしめる。

「……………痛て……」

でも、本当に痛んだのは脚なんかじゃ、ない……。




/ 308ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp