第5章 雨の後
――エドワード・エルリックside――
『おかあさん。おかあさん。おかあさん!』
『どうしたの、エド』
『へへ~~~、プレゼント!』
『あら、お母さんに?どうしたの、これ』
『ボクが錬成したんだよ!』
『エドが?さすが父さんの子ね!ありがとう。本当にエドはすごいわ。こんなに立派な物を作れるなんて……』
『へへ』
『でも……。お母さんはちゃんと作ってくれなかったのね』
はっと目が覚めた。
さっきのが夢だと気づくのに少しだけ時間がかかった。
自分の心臓が大きく脈を打ち、冷や汗が全身から流れる。
昔の、記憶。
母さんに褒めて欲しくて、母さんの笑った顔が見たくて。
必死に錬金術を勉強して。
―――お母さんはちゃんと作ってくれなかったのね。
母さんはそんなこと言わない。
分かっている、あれは夢だ。
だけど……。
―――"人の命をもてあそんだ"結果だろう!!
―――お兄ちゃん、あそぼ
―――禁忌であると知っていても試さずにはいられなかった!
―――お母さんはちゃんと作ってくれなかったのね。
頭の中でずっとずっと響いている。
消したくても消えない。
機械鎧の左足が、きしっと小さな音を立てて痛んだ。
痛くて痛くて、俺は左足をぎゅっと抱きしめる。
「……………痛て……」
でも、本当に痛んだのは脚なんかじゃ、ない……。