第4章 錬金術師の苦悩
外はまだ雨が降っていた。
雨に打たれながら私達は司令部の階段を降りていく。
「それは大人の理屈です。大人ぶってはいてもあの子はまだ子供ですよ」
「だが彼の選んだ道の先にはおそらく今日以上の苦難と苦悩が待ち構えているだろう。無理やり納得してでも進むしかないのさ。そうだろう、鋼の」
司令部の階段、背中を小さく丸めたエドワードくんとアルフォンスくんの姿が目に映った。
その姿に胸がズキンと痛む。
「いつまでそうやってへこんでいる気だね」
それでお大佐は容赦なく冷たい言葉を吐き捨てた。
「軍の狗よ悪魔よとののしられてもその特権をフルに使って元の身体に戻ると決めたのは君自身だ。これしきの事で立ち止まってるヒマがあるのか?」
「"これしき"……かよ。ああそうだ。狗だ悪魔だとののしられてもアルと二人元の身体に戻ってやるさ。だけどな、オレたちは悪魔でもましてや神でもない」
赤いコートを握り締め、エドワードくんはゆっくりと立ち上がり叫んだ。
「人間なんだよ!!たった一人の女の子さえ助けてやれない!!ちっぽけな人間だ………!!」
悲痛な叫びがびりびりと耳に身体に胸に響く。
痛いほどわかってしまう彼の気持ちに私もまた唇を噛みしめた。
「…………カゼをひく。帰って休みなさい」
大佐もきっと理解しているんだろう。
ありきたりともいえる言葉をエドワードくんにかけてやることしかできない。