第4章 錬金術師の苦悩
タッカーさんの事を軍に通報した後、私たちは一度司令部へと戻った。
事の詳細を大佐たちに話している間、兄弟は中に入ることはしなかった。
ホテルに戻るように促したが、返事は返ってこなかった。
それ以上なにを言えばいいのかわからず、私は黙って大佐たちの元へと足を運んだ。
報告が済んだのは時間にして1時間くらいだろうか。
タッカーさんを裁判にかけるため中央司令部へと護送しなければいけない。
直属の上司である大佐がその仕事を引き受けることとなり、部下であるリザさんも同行し事情を知る私も共に行くこととなった。
司令部の廊下を歩きながら、リザさんが静かに口を開く。
「もしも"悪魔の所業"というものがこの世にあるなら、今回の件はまさにそれですね」
「悪魔か……。身もフタもない言い方をするならば、我々国家錬金術師は軍属の人間兵器だ。一度、事が起これば召集され命令があれば手を汚すことも辞さず―――」
大佐は言った。
人の命をどうこうするという点では、タッカーさんの行為も私たちの立場もたいした差はない、と。