第4章 錬金術師の苦悩
「勘違いすんな……」
「……っ」
まっすぐに私を見つめるエドワードくんは、私の手を掴むとぐっと引き寄せられた。
小さい身体に包み込まれる。
背中に回される右腕は冷たいはずなずなのになぜか温もりを感じた。
「オレが守ったのはおまえだ、……」
誰がどう見たって、彼が守ったのはタッカーさんだ。
意味が分からず彼を引き剝がそうとするもぎゅっと強く抱きしめられた。
「………おまえに、人は殺させない」
バカじゃないですか。
タッカーさんの言葉、聞いていなかったんですか。
私は既に人を殺しているんですよ。
何人も何十人も何百人も殺しているんです。
今更一人殺したところで……何も変わりはしないんですよ。
「これ以上おまえが、傷つく姿はみたくねぇんだよ……!!」
「あなたは……ばかですか。私はとっくに人を……」
「そうだとしても!!オレが知っているあんたは、一度も人を殺してなんかいなかった」
しっかりと抱きしめられた身体。
とうの昔になくしていたと思っていた温もりや優しさを感じて、私はそっと「ばかな人」と呟いた。
「はは……きれいごとだけでやってけるかよ……」
「タッカーさん。それ以上喋ったら今度はボクがブチ切れる」
シン、と静まり返った室内にタッカーさんの乾いた笑い声が響いたが、アルフォンスくんの迫力に圧倒され何も言えずに押し黙った。
「ニーナ、ごめんね。ボクたちの今の技術では君を元に戻してあげられない。ごめんね。ごめんね……」
アルフォンスくんの謝罪と合成獣の「あそぼう」という言葉だけが部屋に木霊して、この惨劇を嘆くかのように雨はずっと降り続いた。