第4章 錬金術師の苦悩
「……っ、雪……女……!!」
「………………」
タッカーさんの前に立ち、冷たく見下ろす。
彼を殺させまいとエドワードくんを止めたのに、意味なかったな。
いや、彼を人殺しにしなかっただけでも良かったかもしれない。
手を汚すのは、私だけでいい。
こんな思いをするのは私だけで……。
「"雪女"を怒らせたこと、後悔しなさい」
そう言い放ち、私は腕を振り上げた。
刹那、金属音が部屋に鳴り響いた。
カラン、と紅い刀が地面に落ちる。
「―――……どう、して?」
震える手で、鋭い目つきで、エドワードくんを睨みつける。
「どうして、その男を庇うんですか⁉」
私が刀を振ろおろした瞬間に、機械鎧を刃物に錬成した彼が咄嗟に私とタッカーさんの間に割り込み、刀を叩き折ったのだ。
おかげでタッカーさんを殺しそびれた。
「その男を守ってなにになると言うんですか!!そいつはニーナさんとアレキサンダーを……」
………らしくない。
私だって、彼女くらいの子供を殺してきたじゃないか。
復讐に塗れて自分の行いを正義と勘違いして。
それでもこれほどまでに怒りや悲しみがこみあげてくるのは、自分のしたことがいかに愚かで間違いだったかを知ったから。
知ったところで奪った命は還らない、だからこそ今を生きる人たちを―――……。