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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第4章 錬金術師の苦悩





「はは……、君にだけは言われたくないね……。・アールシャナ中尉。いや、"雪女"と呼んだ方がいいかな?」
「ゆき、おんな……?」

腹の奥がずしりと重くなる。
兄弟たちの前でその名を口に出してほしくなかった。

「君たちは知らないのか!!イシュヴァールの内乱で何をしたのか!!今までに君は一体どれくらいの人間を殺してきたんだ!!いくつの命をもてあそんできたんだ!!なぁ⁉」

イシュヴァール戦で、軍の命令で、私は一体何人の命をこの手で奪ってきたんだろう。
数なんて数えていない、覚えていない。

「人の心を持たない"雪女"が!!私に説教する資格などありはしないだろう!!」
「てめぇ……!!」

拳を握り締め殴りかかろうとするエドワードくんだったが、その動きを止め横目で私を見つめた。
きっと私の異様な雰囲気を感じ取ったのだろう。
振り上げた拳をゆっくりと下ろした。

「……そうですね。"雪女"である私にあなたを説教するなんてそんなことできるはずもありません」

冷気を帯びた私の声色にその場にいる全員が固まった。
殺意に満ちた笑みで、まだ癒えていない右肩に左手を添えた。
ああ、懐かしい。
あの時もこんな風に血で武器を錬成していたな。
自分の血も殺した人間の血も使って。
どんな感情であの時錬成していたっけ。
もう覚えていないや。

「おい、何をする気だ……」
「だめだよ、さん……」

傷口をわざと開き、溢れ出す鮮血を錬成すれば私の手には紅い刀が握られる。
私を止めようと必死になる2人だが、私の瞳にはタッカーさんしか映っていない。


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