第1章 三人の錬金術師
「ここいらじゃ見ない顔だな。旅行?」
「うん、ちょっとさがし物をね」
漸く朝食にありつけた私に、店主が尋ねる。
それに応えたのはエドワードくんだった。
「ところでこの放送はなに?」
「コーネロ様を知らんのかい?」
今度はエドワードくんが店主に尋ねた。
コーネロ様を知らない彼等は首を傾げる。
街の人は言った。
太陽神レトの代理人であるコーネロ教主は、数年前にリオールにやってきた。
そして「奇跡の業」で街の人に神の道を説いたと言う。
彼等は強くレト神を、コーネロ教主を信仰しているようだった。
だが、宗教に興味のないエドワードくんはつまらなそうな顔で、ぐでーっとテーブルに顎を乗せていた。
「ごちそーさん。んじゃ行くか」
「うん」
そう言ってアルフォンス君が立ち上がった瞬間、店の軒天に頭がぶつかり、軒先に置いていたラジオが地面に叩きつけられ落ちてしまった。
「あーーー!!!」
慌てたような店主の声が響く。
ラジオは地面に落ちた衝撃で粉々に壊れている。
「ちょっとお!!困るなお客さん。だいたいそんなカッコで歩いているから……」
「悪ィ悪ィ。すぐ直すから」
「"直すから"って……」
「まあ見てなって」
アルフォンスくんを指さすエドワードくんの表情はどこか得意気だ。
その間にもアルフォンスくんは錬成陣を描いていく。
彼は、アレを見ていないのだろうか。
見ていても、見ていなくても、犯した過ちは、失ってしまうのものは、変わらないか……。