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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第4章 錬金術師の苦悩





瞬間、エドワードくんがタッカーさんの胸倉を掴んで壁に押し付けた。
彼の目にははっきりと憤怒が宿っている。

「この野郎……やりやがったなこの野郎!!2年前はてめぇの妻を!!そして今度は娘と犬を使って合成獣を錬成しやがった!!」

研究材料が「家族の命」なんて……。
そんなの……。

「そうだよな。動物実験にも限界があるからな。人間を使えば楽だよなあ、ああ!?」

エドワードくんはタッカーさんをギリギリと締め上げて声を荒らげるが、タッカーさんには何一つ響いていないようで、それどころか開き直ったように嘲笑った。

「は……何を怒ることがある?医学に代表されるように人類の進歩は無数の人体実験のたまものだろう?君も科学者なら……」

タッカーさんの言う事もわかる。
医学が進歩しているのは人体実験があるからだ。
それを間違いだと大声で叫ぶことはできない。
人を助けるために人の命を犠牲にしている。
それは事実であるが、「命をもてあそんでいる」のかと問われれば、私は何も言えない。
だけど……。

「ふざけんな!!こんなことが許されると思っているのか!?こんな……こんな人の命をもてあそぶような事が!!」
「人の命!?はは!!人の命ね!鋼の錬金術師!!君の手足を弟!!それも君が言う"人の命をもてあそんだ"結果だろう!?」

タッカーさんのこの言葉にエドワードくんのなにかが切れた。
激情に駆られた彼は思い切りタッカーさんの顔面を殴った。

「同じだよ、君も私も!!」
「ちがう!」

殴られ、口の端から血を流してもタッカーさんはエドワードくんを見つめ、楽しそうに狂気じみた笑顔を見せる。


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