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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第4章 錬金術師の苦悩





「信じらんねー。本当に喋ってる……」

エドワードくんもアルフォンスくんも初めてみる人語を理解する合成獣に感心している。
タッカーさんは査定に間に合った事と国家錬金術師の首が繋がり、研究費の心配をしなくて済むと安堵する。

自分がどれ程まで惨い事をしているのか分かっているのだろうか。
それともわかった上で、こんなことを……?

私はゆっくりと合成獣に近づき、優しく撫で抱きしめた。
錬金術の業を一身に負わされ、大人達の都合で無惨に散らされた幼い命を抱きしめられずにいられない。

「……?」

静かに涙を零す私に気が付いたエドワードくんが眉を寄せる。
その時、「えどわーど」と繰り返し彼の名を呼んでいた合成獣が「お、にい、ちゃん」と拙くエドワードくんを呼んだ。
覚えがあるはずだ、その呼び方に。
なぜなら彼女はいつも彼の事をそうやって……。

バラバラだったピースが繋がりはじめ、エドワードくんは大きく目を見開いた。

「タッカーさん、人語を理解する合成獣の研究が認められて資格取ったのいつだっけ?」
「ええと……2年前だね」
「奥さんがいなくなったのは?」
「…………2年前だね」

タッカーさんの声色が変わったのが背中越しでもわかる。
エドワードくんの核心をつく質問にこれ以上は隠せないと諦めたのか、それとも"演じる"ことをやめたのか。
そんなのどっちでもよかった。

「ニーナとアレキサンダー、どこに行った?」
「……君のような勘のいいガキ嫌いだよ」

鋭い眼でタッカーさんを睨みつけるエドワードくん。
アルフォンスくんもまたタッカーさんの行った所業にまさかと合成獣を見る。
合成獣は私の腕の中でずっと「おにいちゃん、おねえちゃん」と繰り返す。

頬に流れる涙を拭い、タッカーさんを見ればそこには優しい父親の面影は一つも残っていなかった。


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