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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第4章 錬金術師の苦悩





走って、走って、ひたすら走った。
一度司令部に行き、車でタッカー邸に行こうと思ったが、司令部に行く時間も車を出してもらう時間もそのどちらももどかしかった。
なにより、自分の身体能力には多少なりとも自信はあった。
そのはずなのに、いつもより息が苦しく、足が重い。
気持ちだけが焦りとなり先走るのがわかる。

私の思い違いであってほしい。
そうであると信じていたい。

ヒューズさんに調べてもらったことから導き出された結論、人間を使った合成獣の錬成……禁じられた忌むべき行為。
それが今、"再び"繰り返されようとしている。

確証はない、むしろ、信じたくない。
失礼な事をいって、エルリック兄弟に叱られて、タッカーさんに謝って、許されて、そして……ニーナさんとまた―――。

「……っ、ニーナさんっ!!」

切実な思いを含んだ呟きは、今にも泣きだしそうな空へと吸い込まれていった。

タッカーさんの家に着いた時、ちょうどエルリック兄弟がタッカーさんの家の中に入るところだった。

「、どうしたんだよ。そんなに慌てて」
「……さん?」

肩で息をして苦悶の表情を浮かべる私の様子に異変を感じた兄弟だが、私は彼等の声を無視してタッカーさんの家の扉を開けた。


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