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【鋼の錬金術師】紅の幻影

第4章 錬金術師の苦悩






『2年前に作った喋る合成獣だが、これはどんなに調べても材料がわからなかった』
「……意図的に隠している可能性がありますよね、それ」
『そこについては言及しねえ。だが可能性はあるだろうな。だが問題はそこじゃない。調べていくうちにわかったんだが……タッカー氏の奥さん、捜索願が出されている』
「え……?」

捜索願い……?
どういうことだ。
だって、タッカーさんの奥さんは貧乏な生活に堪えられなくって家を出たって……。
そのあとに行方不明になったとか……。
でも、そんなことタッカーさんは言っていなかった。

「ど、どういうことですか……!?」
『捜索願を出しだのは奥さんの両親だ。2年前に出している』
「に、ねんまえ……」

モヤモヤとしていたものが、バラバラだったパズルのピースが、全てが晴れて繋がっていった。

2年前の国家試験。
提出された人語を喋る合成獣。
同時期に出て行った妻は行方不明。
研究材料が明記されていない研究データ。
近づく今年の査定。
ニーナさんとアレキサンダー。
タッカーさんの笑み……。

まさか、そんな……。
最悪な未来が頭に過る。
ドラムを鳴らしているみたいに心臓が身体中に響いていた。

『?おい、聞こえてるか?』

ヒューズさんの声が遠い場所で聞こえる。
私は掠れた声で彼にお礼を言って受話器を置いた。
急がなくちゃ。
いつの間にか時刻は11時を過ぎていた。
私はコートを着るのを忘れて、タンクトップとショートパンツといったラフな格好で外へ飛び出した。
すれ違う人々は私の姿に驚いているのか、それとも蒼白な顔面に驚いているのか、彼等の視線は私に向けられた。


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