第2章 「早く言えよ」
「MEN、おんりーチャンのこと見過ぎじゃね?」
と言ったのはぼんさんだった。俺は不覚にもドキリとしてしまった。
「そんな訳ないじゃないっすか」
と俺がなんとか言い繕うと、あまり人のことを疑わないぼんさんがそうかと頷いて手元の食事を頬張る。だがその隣にいたドズルさんには何かしら勘づかれたのだと思われた。
「そろそろ帰りましょう、ぼんさん」
そう切り出したドズルさん。確かに、この飲食店に来てそろそろ一時間にはなろうとしていた。見ればドズルさんの手元のアルコールは二杯目を飲み終わろうとしていた。ぼんさんは最近よりよく食べるから、空の皿が山になろうとしていたが。
「え? まだいいんじゃない」
おんりーチャンもトイレから帰ってきていないし、まだもうちょっとと言うぼんさんに、僕が払いますからとドズルさんが言ってそこで眠りこけているおらふくんに声を掛けた。
「おらふくん、眠いなら家まで送るよ」
「……ん? あ、ごめんなさいっ。僕、いつの間にか寝ちゃったみたいで」
ドズルさんはそんなおらふくんを笑って受け止め、早々に帰る準備を始めた。ってかおんりー待たずに本当に帰るのか? この人たち。
「じゃあ俺も……」
「MENはおんりーに僕たち先に帰ったって伝えて置いて」
「だったら別に先に帰らなくても……」
「いいかいいから。お二人でゆっくりしてな」
お金は大丈夫、とドズルさんはテーブルに支払い用のお札を多めに置いて部屋を出て行った。出ていく間際にぼんさんが大きな声を出したが、ドズルさんが抑えるように引っ張っていってすぐには静かになった。状況が分かっていないだろうおらふくんだけは寝ぼけ眼でじゃあまたな、と手を振って立ち去って行く。