第2章 「早く言えよ」
「……食べる?」
なぜそんな話になるのか。俺は今告白したばかりで脳内真っ白なんだが?
「ほら、口開けて。あー」
何も答えていなかったのに、おんりーがさっきまで自分の口の中に入れていたスプーンのまま俺に差し出してきた。俺はすぐに応えられなかった。
「ちょちょちょちょっと待てよ……それじゃあ間接の……」
「ダメ? 恋人なのに」
おんりーからそんな言葉を聞くことになるとは。俺は頭がクラクラした。きっとこれは夢なんだと思い込むことにして。
「あ〜……」
おんりーのスプーンが近づいてくる。ただそれだけなのに、心臓がうるさい。
「ん……」
なんとか口を閉じれば、優しくスプーンを引き抜いておんりーは瞬きをした。
「どう? 美味い?」
正直味なんてよく分からなかった。こっちは死ぬ程緊張していたんだし。
おんりーも俺の答えは待っていなかったのか、すぐにはスプーンを引っ込めた。そして俺の口に入れたばかりのスプーンをわざとらしく舐め取ってこちらを見据えた。俺の動揺が分かるのかイタズラっぽく笑って。
「何考えてるのさ」
「いや、俺は何も……」
おんりーエロいな。
そんな言葉は今は飲み込んで、口の中に溶けきらなかった甘いものを堪能することにした。
おんりーは俺にとって、世界一だ。
おしまい