第2章 「早く言えよ」
日本一、らしい。
未だに、日本一の称号を持つ彼のことを信じられない訳じゃない。ただ、そんな男が俺たちのそばにいることが不思議なだけだ。
「MEN、飲み過ぎたんじゃない?」
「え?」
俺たちは今、個室の飲食店で撮影の打ち上げ会をやっていた。俺がよほどボーッとしていたのか、ドズルさんが心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「はっはっはっ、まだまだ飲めますよ」
と俺は笑いで誤魔化して手元のアルコールで喉を潤す。……アルコールなんかで潤う訳がないが、この酔いしれた飲み物や雰囲気に俺はもう充分満足だった。
ちらりと、おんりーの方を盗み見る。
おんりーに初めて会った時は本当に驚いた。本当にこんな小柄で好青年な彼がおんりーだったのか、と。
気遣い上手で手先も器用で判断力にも優れる。それでいて見た目もいいと来たらきっとモテるんだろうとか思う。俺とは真反対だ。
あ、今席立ったな。
俺は手元に視線を戻し、ちょっとお手洗いにと部屋を出て行ったおんりーを横目にまたアルコールを口に含む。なぜか自分自身が熱っぽい感じがした。きっとアルコールのせいだろう。