第2章 プロローグ
グランドライン後半の海、人呼んで新世界の大海原。
そこを優雅に泳ぎ続ける巨大な白鯨を模した船と、比較して小さめな黒い鯨を模した随伴船が二隻。
その船の名前はモビー・ディック、新世界を統べる四皇白ひげ海賊団の愛船達である。
彼らは白ひげこと船長エドワード・ニューゲートを父親と呼んで慕っており、クルー達は全員が船長の愛する息子達、数多の高名な海賊達を傘下に連ねる、総勢1600人にも及ぶ1から16の隊を編成している大家族。
それが四皇の一人にして、世界最強と言われる白ひげ海賊団だ。
ある日、そんな彼らの元に新たに一つの荒くれ者の海賊団が戦いを仕掛けたのだが、あっさり負けると同時に性分を気に入った船長によって家族へ加わることになって。
無事に親子関係に結ぶ儀式を終えて暫く経った時のこと、新人の一人が古参のクルー達と共に隊で当番になった甲板掃除をしている最中にふと「そういえば……」と何かを思い出して口にする。
「そういえばオレ、ずっと気になってたんスけど……」
「んあ?」
「どーした??」
「オヤジが甲板に出てる時、いっつもマストをスクリーンにして電々虫の映像流しっぱなしじゃないっスか?砂嵐なのにオヤジも皆も暇になったら見に行くし、一体何を、何時見れるのか不思議に思ってて……」
新人がそう気になって尋ねるように、白ひげ海賊団では天気が良い日に船長筆頭の不思議な行動を見せる事がある。
この船には白ひげが持つだけ持って使おうとしない、大型の映像電々虫が一匹いる。
持ち主である白ひげが何か撮ろうとする素振りも無ければ、その虫が普段他の虫が受信する映像も写さず、時折流れる所を見ると砂嵐……一体なんなんだ?
そんな最もな疑問に対し、先輩クルー達が「ああ、それはだな……」とと何か言おうとした時だ。
そこへ偶然厨房で話が聞こえていたらしいた四番隊隊長のサッチが顔を出し、アイデンティティの茶髪の髪と目元の傷の厳つさも吹っ飛ぶ満面の笑顔で現れた。
「あれはオヤジが何十年も大事にしてる、今は超遠距離の甘酸っぱい初恋のお嫁さんと、その家族の様子を写してくれる唯一の電々虫なのさ!」
「は、初恋?!オヤジにもそんな相手がきたんスか?!」
「あったりめぇよ!オヤジだって若い時は恋に燃える一人の男、今でもその女性を一途に想ってんのさ!!」
