第3章 運命は須くハリケーン
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その日は散々な大嵐だった。他地方の島が望める位置とは反対側の空から一気に暗雲が島を覆い隠し、大雨と落雷が島全体に襲いかかった。しかし幸いそれで川や池が洪水になったり、山が土砂災害わ起こしたりする事はなく。こういった被害に遭わないように水場や山から離れた平地に建てた島の管理人の生家と、隣接させた巨大なドーム状の建物の中にボールから出して自然と生活しているポケモン達を全員避難させていた。──────
ポケットモンスター、縮めてポケモン。人と共存する不思議な生き物の総称であり、普通に野山で生きている者達もいれば、神話で語られる遠い昔の人目に触れない者達だって存在する。そんな彼らの可能性は無限大だ。凡ゆる方法で進化する彼らは通常の最終進化を超えて、特殊な岩石とポケモンとトレーナーの絆によって一時的に変化するメガ進化、とある地方の別の岩石ではポケモンが巨大化するダイマックス、最近は新たにテラスタルというタイプ毎の変化や、パワーアップも確認されたらしい……。
更にとある地方ではトレーナーとポケモンが息を合わせたタイプ別の特殊技や、人間とポケモンの脅威になるという『ウルトラビースト』の存在も確認れている……。ちなみにウルトラビーストに至っては、世界規模で危険なウルトラホールから繋がる異空間・ウルトラスペースに住んでいる。特殊なポケモンの一種らしいのだけど、その生態は未知数なので一通り捕まえておいたはいいけど、気軽に出せていないのが現状である。
そして島には此処の管理人が何年も凡ゆる地方を冒険して出会い、仲間になって、ポケモンバトルや旅路や実家生活で苦楽を共にし、時には喧嘩もするけど仲良しなポケモン達がいる。現在、島に住んでいる人間は管理人一人になってしまい、両親や祖母はとうの昔に他界し、この一族以外の住人なんてそもそもいない。ポケモンは管理人の何百という仲間達と、野生の個体達が共存している。
島の管理人・シフォンは齢14で一人暮らしする女の子だ。自分の食時はなるべく自給自足で確保しており、バトルやコンテストに勝って得られた賞金は冒険中の備品とポケモン達のものだ。冒険では幾つもの地方のポケモンジムをクリアしたし、凡ゆる自然やポケモンの神秘、神話の片鱗、それを利用する人間の悪意も、それ以上に心もバトルも強くて優しい人達が世界に大勢いるのを知った。
