第3章 運命は須くハリケーン
しかしその場で唯一、他の14人(2番隊隊長は空席である)と違って困惑を露わにした顔で父親を見上げ、何故か愛用の鎖に鉄球を付けた武器を横に両手を白のロングコートの内側で後ろ手に組んで佇むラクヨウ。不思議な事に彼の上着は背中がモゾモゾと動いており、目撃している背後の船員達が皆で一体何あるんだ?と首を傾げている。
もちろん彼らの父親が甲板を埋め尽くす大人数の息子達に群がられる中、彼らを見回していれば些細な違和感も気づかぬわけもなく。と言うか、ニューゲートほどの男であれば僅かな気配も感じ取り、
見逃すことなどよっぽど何らかで生命活動が弱っているか、気配が薄くないとあり得えない。しかも何十年と冒険して来て長い年月ずっと縁が無かった、この世ならざる神秘的な懐かしい生き物の気配だ。それを面白そうに喜んでニヤッと笑った父親は、珍しい態度のラクヨウを見据える
白ひげ「グララララッ!ソイツはいつの間に拾って来たんだラクヨウ?全員に紹介しなきゃならねェ、出してやれ」
マルコ「紹介って……、ラクヨウ!テメェ何の生き物拾って来た?!」
サッチ「ギャップ萌えか?狙ってたのか?」
「「うっわぁ……」」
ラクヨウ「ちげぇよ!!やめろよそんな冷ややかな目、逆にひでぇぞ?!つーかオレが拾ったんじゃなくて、海からコイツが飛んで来たんだ!背中にぶつかって来たんだよ!」
何故か嵐を脱したと思えばラクヨウが生き物を隠し持ってる事が判明し、白状しろと説教し出したマルコと、真顔で巫山戯るサッチに便乗してドン引きしている家族達。そんな扱いをされては流石にブチギレてしまったラクヨウは腕に抱えたモノを、『コイツ』と呼んだ存在を大勢の家族に見せつける為に差し出した。
そのモノは正に海の如く青くて艶めいた体を持っており、頭頂部には二つの触覚。目元は黄色の丸が二つずつと、体に黄色や赤の模様が一つある。大きさは子供が抱えきれる程度しかなく、誰もが神秘的に思える美しさと愛らしさがあって、ラクヨウと白ひげ以外が全員で息を呑んで驚いた。
ハルタ「えっ……何なのその生き物……」
サッチ「知らねぇ生き物みてぇだな……クリオネみてぇに見えるけど……」
マルコ「それでも、オヤジやラクヨウ達は知ったんだろぃ?」