第3章 君の夢の中に入りたい
すると、おらふくんが思い出したかのようにこんなことを言ったのである。
「そういえば僕、夢見たんよ」とおらふくんは話す。「おんりーの夢!」
「え」
俺は不覚にもあからさまに驚いてしまったが、ぼんさんの大きな声が俺の声を掻き消した。
「何なに、どんな夢?」
その質問に、おらふくんはスラスラと、おんりーが夢の中にいてさと話し、俺は内心ホッとした。まさか俺の夢の中を覗き込まれるなんてことはないのだ。
「おんりーは頼りになるからな。夢に出てきたんじゃない?」
とドズルさんが言えば、そうかもなぁとおらふくんが通話越しで頷いているような気配がした。俺はおらふくんがどんな夢を見たのか気になっていた。
「で、夢の中でおんりーちゃんとおらふくんは何してた訳?」
口がよく回るぼんさんは、根掘り葉掘り聞こうとする。ちょっと無神経だよなと思うことはあるけれど、この状況ではとてもありがたかった。
「それがな、一緒にエンドラ討伐していたんやけど……」
うっかりマグマに落ちてしまったところを、おんりーが水バケツで助けてくれたんよ、とおらふくんが話した。
「それ実際あったことの話なんじゃない?」
「僕、おんりーとプライベートでマイクラやってたんやわ」
ぼんさんの茶化し言葉に、冗談交じりにおらふくんは言い、ドズルさんとMENが大笑いした。俺もノリで笑ってみせたが、内心は平然としてはいられなかった。
その後はみんなとの雑談も終え、俺はそろそろと寝る準備を始めていたが、おらふくんの話したことが脳裏から離れなかった。
俺とおらふくんが撮影関係なくゲームで一緒に遊ぶことがあったのなら。
普段とは違うおらふくんの話が聞けるのかもしれない。
そんなことを考えてしまう自分が本当に嫌だった。そう考えてしまうということは、普段から見えているおらふくんは一部の彼にしか過ぎないと思い知ってしまうからだ。
人には秘密の一つや二つくらいある、ということを理性で抑え込もうとしているのに、その秘密に触れてしまいたいという自分の欲望が渦を巻いていることを自覚してしまった。
君の夢の中に入りたい。
俺は雪だるまを枕元に置いて、夢の中を願った。