私が嫌いな私なんて○したっていいじゃないか(短編集)
第2章 家政夫なぎさん
今日家に帰ったら渚さんがご飯を食べていた。買ってきたのかと思ったがどうやら私宛の作り置きとレシピがどうも一緒だ。?でいっぱいになってると渚さんが慌てて代弁した
「す、すみません!今日お肉の大きいサイズのが安かったので二人前で余った分を頂いてるんですけど!」
『ああ、そういうこと…
別に構いませんよ。値段がいつもと高く付いていないなら。割引されてるならきっと期限もそう長くはないだろうし…
せっかくですから今食べてしまいますよ』
イスを引いてテーブルに着くと渚さんが目を見開く
『何か?』
「遊夢さんと一緒に食事したの初めてな気がして…」
『…』
そういえばそうだ。一人暮らしをしてから互いに向き合って食事をしたのは久しぶりだ。気を遣うから余り気は進まなかったんだけど、たまにはいいか
『上手くなってますね』
「…!本当ですか!?人に出す物だから攻めてもう少しちゃんとした物を出したくて色々読み漁ってたんですよ」
『すみませんいつも感想を伝えられなくて。
料理ができる男はモテますよ。これ社会の常識ですから』
「別にモテたい訳では…」
『同居したらこの関係が一番居心地がいいのかもしれませんね………』
「え?」
『いえ、何も』
客と店員。最低限のことをこなしてくれれば何の期待もしなくていい。私情が混ざる恋愛婚なんてろくなことがない。
大人のシビアな考えを持ちながら渚さんが作った生姜焼を口に入れた
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今日は仕事は休み。しかし手はパソコンのキーをずっと打ち込んでいる。特に行きたい場所もないから明日の業務を少しでも片付けておこう
リビングの小さな机の周りをモップがけする渚さん。少しチラチラとこちらを見ていたので作業をしながら話しかけた
『何です?』
「遊夢さんって…………
結婚しないんですか?」
『………は?』
今ここでする話ではない。私は拍子抜けた声を出した
『どうしてそんなこと聞くんですか?』
彼に聞けば苦そうな顔をして黙り込む。あーはいはい、そっちからは動くつもりないのね