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私が嫌いな私なんて○したっていいじゃないか(短編集)

第11章 たんじょうび


「へえ、顔見知りって聞いたから知ってると思ってた。
まあとにかく早稲田さんもおいでよ。プレゼントとかもろもろの準備もよろしくねー」

と言って彼女は走り去ってしまった


『プレゼント…か』
何を渡せばいいんだろう。と財布を開けてみたが問題発生。


お金がない


いや、ない事はないんだ。しかし私の財布の中身はほぼ食費に持っていかれてしまうのでおこ遣いの余裕がないのだ。しかもここ最近は父の給料日直前。頼んでも承諾なんで見込めないだろう


『ど、どどど…どうしよう…』




そこで思いついた苦肉の策が四つ葉のクローバーを探すことだった。子供じみた考えだったが、まだ初夏で緑が沢山生い茂っている。まだチャンスはあると必死で探し回った


それも時を忘れて


その頃の私は渚さんに対して慕う気持ちが強かったので彼に幸せになって欲しいと天秤を彼に傾けていた。



けど、見つからない。いつまで経っても、どこを探しても。私の顔は焦りと不甲斐なさでぐちゃぐちゃだったと思う。






「早稲田さん!貴方どこに行っていたんですか!!」
タイムアップだ。
先生に回収され、なけなしの一握りだけを持ち帰った




「遊夢ちゃん!どこに行ってたの!?もう授業始まってるのにいないんだもん、心配したよ!!」

帰った私に一番に話しかけたのはもちろん渚さんだった。けど、彼に会せる顔もなくて、かといって俯けば私がむしり取った三つ葉が私の心をえぐった。

感情がもう蓋からあふれ出してしまってボロボロに泣いた



『あああああ…』

「!?」



―――

『まさか、本当にあの時の?』

「うん、後で話を聞いたよ。お金なかったけどどうしても渡してあげたかったんだって。
そう考えるとどうしようもなく愛おしくなっちゃって」

『三つ葉に?』

「ううん、その過程が?って言うか遊夢ちゃん自身が」

『!』
「僕の為に想ってくれた涙だったんだなって。枯らすの勿体ないから思い出ごと押し込んじゃった」

話している間、渚さんの口角はずっと緩みっぱなしだ。そこまで思われていたんだと思うとこっちまで恥ずかしくなる
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