私が嫌いな私なんて○したっていいじゃないか(短編集)
第11章 たんじょうび
『あ…』
私の部屋の小さなソファーで渚さんが静かに眠っていた。今日のデートで歩き過ぎて疲れたのかな…ついさっきまで読書をしていたのか手元には本が乱雑に置かれている。
私はつい出来心でそろりそろりと彼に近づいた。こういう時にしか彼の顔をまじまじと見ることなんてない。
わあ、肌もちもち…22歳になっても未だにこの顔面偏差値だとはもう国宝級ですよ国宝…
初めて髪切った時はもうギャップ萌え過ぎて暫く顔を合わせられなかった…勿論髪を結っていた時も大好きだったけどより男性らしくなったというか…抱かれる時に本能的にキュンキュンしちゃうって言うか…
とオタク染みた思考で渚さんの顔をつんつこしてたら…
((パシッ
手が動いた。心臓止まった
「こら」
バレてた
彼は私の手を引いて頬に軽くキスをした。
『あっ』
と膝に残った本がバランスを崩したのか床にひっくり返ってしまった
『ごめんなさい』
「ああ、いいよ自分でとるし」
慌てて本を拾い上げ返そうとすると、何か細い短冊がハラリと落ちて来た。
これは…俗に言う栞だ。既読したページに挟んでおくもの。三つ葉のクローバーが押し花されてた。私は使わない派なので、そんなものを持ってるなんて律儀だなーなんて考えてたら…裏に私の名前が…
『渚さん、これ…』
見せてみると、彼はにっこりと微笑んで膝の上に招き入れた
「遊夢ちゃんからの誕生日プレゼントだよ。それを栞にしたんだ」
『えっっ、私こんなしょぼい物プレゼントしたんですか!?何なら今からでも代わりの物を…』
「ああ、いいのいいの。僕にとっては最高の贈り物だったから」
意味が分からず私だけが首を傾げた
「覚えてるかなー?E組の時にもらったものなんだけど…
遊夢ちゃんが初めて授業をサボった日でもあったね」
7年前…
それを聞いてぼんやりと思い出す
―――
「え?早稲田さん知らない?7月20日って渚の誕生日なんだよ」
茅野さんにそう話された。彼女から渚さんの誕生日会をやろうと言われたのが事の発端だった
『え…そうなんですか…?』
「うん。知らなかった?」
『……はい』
恥ずかしながら今まで友達なんてろくにできなかった私は渚さんと今までそういう会話をしたことがなかった。その時が初耳となるわけだが