私が嫌いな私なんて○したっていいじゃないか(短編集)
第10章 沼
家庭だって一緒だ。赤の他人に何ができるのか。自分の問題は自分で解決しなきゃならない。いつかは…私の意志だって…
でも、このままで…
本当に私はあいつから解放されるときは来るのだろうか…
『怖いんです…このまま、私の意志も揉消される時が来るんじゃないかって…』
「…」
『また…嵌っちゃったな…』
「何に?」
『沼、ですよ。
言いたい事があるなら結果で示せ、そう言う家庭で育った身ですから。一度そんな恐怖とプレッシャーに捕まると昇って来れなくなるんです。本校舎の…白鳥の私がそうだった。
藻掻けば藻掻く程どんどん奥底にズブズブと沈んでいく…
そこは、暗くて、息苦しくて…自分が何なのか、上下感覚さえも鈍ってしまう。
だから、あの時に気楽そうに生きている貴方が恨めしく思えたんでしょうね』
「…!へぇ。」
もうじき本格的に進路を決める時が近い。もう自分も、親も、誤魔化せる気がしない。
その時、私はどうなってしまうのだろう…
「……意志、なんて…
初めから揉消されてんじゃない?」
『え』
「自分で風に煽られないようにしない限り」
”井の中の蛙大海を知らず”
ではないけれど、箱庭で育ち過ぎた私には本当の空を知らなかった。”この学校”もそういう子達が集まった場所だから。幸せの道は一本しかない、そう教育された。その象徴がE組制度なのだから。
そういう意味では彼一人孤立した存在だった。色々な可能性を秘めている、それが人生という物なのだと存在自体訴えていた気がする。だから私と浅野さんは、
彼を羨ましいと思ったのだろう
『……赤羽さんって…少し先生に似てます』
「え、あのタコと?勘弁してよ」
路を教えてくれた、という点に関しては