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私が嫌いな私なんて○したっていいじゃないか(短編集)

第8章 風邪をひいた日


「聞かれてましたか」

やれやれと頭をかく先生。そして「早稲田さんが回復したら叱られてしまう」と付け足した


ああ、やっぱり本当なんだと手を握り締めた

「しかし何故?」

「それが本当なら、僕は遊夢ちゃんに嘘をつかれてる」

「にゅ?」

夏休み、僕の母さんを羨ましいと嘆いた彼女はいつも誰にも話さない自分の家の事をポロリと漏らした

『私の母は仕事でほとんど家に帰ってこないんです。どちらかというと父と一緒に居ることが多くて』


その時は何とも思わなかった。あれだけ過去に思い詰めていた彼女が”そう”であるかなんて疑いもしなかった。
だから尚更朝、先生たちの話声を聞いて違和感を感じたんだろう。


「分かってる。遊夢ちゃんしか知らない、話したくない理由があるんだって。遊夢ちゃん自身からも『話せる時になったら話す』って聞いてるし。

皆が普通に持ってる、お母さんがいないなんて掘り返されたくない話題だろうし、異性一人で屋根の下で生活を回すって本当に大変な事だと思う。



僕も、そうだから…」

「…」

「けど、やっぱり、余計にあの時に、

誰にも気づけない位に、空気のように嘘をつけた遊夢ちゃんに何があったのか不安なんだ…」








「……今朝、早稲田さんの家を覗きました」
殺せんせーは天を仰いだまま続けた

「彼女が倒れていたリビングでは人の痕跡が散乱していました。彼女にとって生活することは私達の想像よりもずっと大変なのかもしれません」

先生は決して何があったのかは詳しく話すことはなかった。でも、察する力は僕等にも持ってる。みんなもきっとどこかで”何となく”気づいてた筈だ

「彼女が頑なに身の上の話そうとしなかったのは皆に余計な心配をかけたくなかったのでしょう。

哀しいですね。失うことに慣れてしまえば保守に走ろうとする。そこに幸せがあるかどうかも知らないまま」



”彼女は、どんな「路」を歩もうとしているんでしょうね”


先生が静かに呟いたその声はチャイムの音で消えて行った


―――
あとがき
進路相談前をイメージして書いた話。(主人公目線少な)いつも渚君のもどかしさを書いてたけど、本当のことを知っていつつ話すこともできない先生側の辛さもあるよなって。
だが絶対gdgd
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