私が嫌いな私なんて○したっていいじゃないか(短編集)
第8章 風邪をひいた日
どんよりとした空から雨粒が降って来た。こりゃ強くなるな…
放課後、昇降口の前で屋根から手をかざしている私に渚さんが声をかけた
「遊夢ちゃん?傘忘れたの?」
『いや、今日の帰りに買い出しに行く予定だったんですが…降られて少し厄介だなと思って…』
「え、大丈夫?ついて行こうか?」
『平気ですよ。まだ小雨ですし早く行ってくればまだ間に合います。
じゃあ、また明日』
「え、ちょ遊夢ちゃん!?」
後悔した。誰でもいいから連れてくればよかった。両手にはパンパンのビニール袋、右肩には重い荷物、おまけに傘は肩に刺してまともに差せてない
脚に至っては既にびしょ濡れだ。靴の中に入り込む水分がここまで憎い時は他にないだろう。
あー…帰ったらどうしよう…玄関にタオル準備し忘れたしな。その気怠さも車の跳ねた水で最高潮に達した
『あーーーーーもう!!!』
次の日、風邪ひきましたね、はい。案の定。
38.7℃。珍しく高熱だった
身体が熱くて怠くておまけに頭痛も酷い。普段の疲れが身に響いたのかな…
「風邪で欠席?
フン、買い物の雨で体調を崩すとは母親に似て馬鹿な娘だ。自分で管理しておくのが社会人の基本だぞ。
どうせ家で寝てるんだから掃除とかしておけよ」
そう言って父は出て行った。あいつの毒舌は相変わらずだったけど久しぶりに休めたことが少しだけ嬉しかった。
だが問題発生。あまりの体調の悪さに学校に欠席の連絡すらできない。
『相当ひどいな…
とりあえず解熱剤を飲もう。連絡はそこから考えよう…』
いつもより重い足取りで階段を下る。
頭痛い……気持ち悪い……
が、台所を見ると汚れた食器や道具、昨日の飲みかけのビールの缶など「汚い」の体現がそこにあった。
これを片付けろと……?この病人に……?
『ふざけん、な……よッ……』
諦めと絶望と自嘲と体の重さでそこから意識を失った
――――
「おや、早稲田さんがいませんね。どなたか行方を聞いていませんか?」
「え?今日はとりあえず当分見てないけど…」
「そろそろ一時間目が始まってしまうんですが……
先生確認してくるので始まったらひとまず自習していて下さい」
「早稲田さん失礼いたします。早稲田さ……ギャーーーーーーー!!!」