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私が嫌いな私なんて○したっていいじゃないか(短編集)

第7章 今度は貴方の隣で…


渚side

これは、僕らがE組に落ちたばかりの頃の話。
E組になった人は部活動も禁止される。つまり、僕が入部していた吹奏楽部からも去らなければならなかった。

「ごめんね、着いてきてもらっちゃって」
『いえ、どうせ暇でしたし。引き取るなら荷物も沢山あるでしょう』


一週間以内に部室から荷物を引き取るようにと指示され、本校舎に立ち寄った。とはいえ、なるべく元クラスメートや部員になんて顔を合わせたくはないから時間をずらして来てみた

『それに、私もここに入るのはもう最後になるでしょうし』

まつ毛を伏せて言う遊夢ちゃん。立ち寄ると彼女に言うと付いて行きたい返したのでいいよと答えた




部室、またの名を音楽室の扉を開けると、懐かしい埃っぽい匂いが漂った。遊夢ちゃんも別れを惜しんでいるのか少し寂し気な表情だ

「待ってて、今荷物まとめてくるから」
『(こくり』





「…(……これも、もう触ることもないんだろうな…)」

黒い箱の鍵を開け、金色のメッキが光る表面を撫でる。ここの楽器は大体貸出式だから”これ”は持ち帰ることはできないな
『渚さんってなんの担当してたんでしたっけ?』
「わっ!」

いつの間にか背後で遊夢ちゃんが覗いていた。彼女の質問に苦笑いで渡してみる


『トロンボーン…』
「遊夢ちゃんが何度かウチに指導しに来た時にも僕いたよ?」

『え、そうでしたっけ』


―――

「はい、みんなよく聞いて。今回の練習には音楽特待生の遊夢さんに来てもらったから。コンクールに向けて無駄にしないように」

遊夢ちゃんはあの音楽の才能だけあって色々な部活から指導の引っ張りだこだった。あの時は彼女の事を知って間もなかったから、本当に一人で指導なんてできるのか疑っていた人もいた。けど


『一旦止めて。

ここのパート、メロディーはフルートですからもう少し出さないと曲全体の質が落ちてしまいます。もしすぐに息を増やすことが難しいようであるなら…』

その疑問は一気に覆された。あの大音量の中で分析と対策を練ることが同時にできる中学生は中々いない



そう言う意味でも彼女は高嶺の花だった。

―――

『あーそんなこともありましたね』
そう素っ気なく言う彼女にとってはもう思い出したくない過去の事なのかもしれないけど
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