私が嫌いな私なんて○したっていいじゃないか(短編集)
第2章 家政夫なぎさん
『あ…』
お米の安心する匂いで夢から覚めた。酷い終わり方だ
「起きました?」
視界には渚さんの優しい顔が
「あ、汗かいてるので拭いておきますね」
白いタオルで私の顔周りをトントンと拭いた。これが汗じゃなくて涙だってことを知っているのは私だけ
「お粥作りました。他にも用意してますけど、とりあえず食べられるか見るのでお粥だけ食べてみて下さい」
そう言って差し出した家で一番大きいスプーン。掻き玉で包まれているお米がほかほかと湯気を上げていた
『え?口開ける感じ?』
「当たり前です、ここで休まないでいつ休むんですか!たまには甘えてもいいんですよ?」
首を傾けて心配する顔に負けて私は大人しく口を開ける
「はい、あーん」
『………アガッ』
「だ、大丈夫ですか!?」
『あつい…』
「ごめんなさい、次から冷まします(汗」
お粥の小皿を完食した時、私はようやく恋人遊びから開放された。(あの後も一途にスプーンをふうふうしてくれた渚さん。可愛いけどされるこっちは恥ずかしい)
「まだ食べられそうですか?」
『はい、意外といける』
「良かった、じゃあおかわりとお浸しとかりんごとか持ってきますね!」
そこまで用意して貰ってたのか…何だか今更罪悪感にさいなまれる…
「多かったら残して貰って大丈夫です。僕もお昼食べるのでリビングにいます、何かあったら呼んで下さい」
時計を見るとすでに正午を過ぎていた。
なんでこの人は私にこんなに手厚く扱ってくれるのだろう…
「んー、お粥なんて久々に食べたな〜
偶には欲しくなるね」