第5章 投影
その姿を眺めながら少し身体を移動させる。
沖矢もそれを察して壁に手をついた。
俺と沖矢に逃げ道を塞がれた名前が驚いて動けずにいる。
安室「僕というものが居ながら」
沖矢「私というものが居ながら」
「「 嬉しそうに話している
なんて妬けてきますね 」」
名前「?!」
言葉と行動が異常にシンクロしたが、
互いに譲ることも出来ない。
俺は名前の左頬に、
沖矢は彼女の右頬に口付け、
その照れて赤くなっている顔を眺めた。
松田「…何やってんだお前ら」
ジトりとした目を向けられ、その余韻に浸れなくなった。
安室「…見てわかりませんか?名前を奪い合っている最中です。邪魔という無粋な真似はしないで頂きたいですね。」
松田「俺、お前の“ソレ”(安室)慣れねえわ。あと無粋な真似すんのには理由がある。」
松田が指を刺した方向を見ると執事が持っているフォークがあらぬ方向にウネウネと曲がっている。
どういう原理か驚いて見ていると執事はパッとフォークを消した。
それは白いマントを着た奴を思い出させる仕草だったが、この船に乗り込めるとは思えなかった。
(消えたフォークの行方は気になるが…)